紅茶にも、ISO規格があります。
しかも1980年に、紅茶をどう淹れて、どう比べるかを決めるための規格が作られました。
ただし、先に言っておきます。ISO 3103:1980は「これが一番おいしい紅茶の淹れ方です」という正解ではありません。家庭の好みを取り締まるルールでもありません。
紅茶を比べるとき、条件がばらばらでは話が始まらない。だから、同じ土俵を用意する。そのための規格です。

紅茶の味を比べるのに、なぜ規格が必要なのか
同じ茶葉でも、淹れ方が変われば味は変わります。
湯の温度、抽出時間、茶葉の量、器の形、注ぐ順番。どれか一つが違うだけで、色も香りも渋みも変わる。片方は大きなポット、もう片方は小さなカップで淹れておいて、「こちらの茶葉の方が優秀だ」と言っても、それは茶葉の差なのか、淹れ方の差なのか分かりません。
そこで必要になるのが、比較のための共通条件です。
ISO 3103は、英語でいうと「Tea — Preparation of liquor for use in sensory tests」。日本語にすれば、紅茶を官能試験に使うための浸出液の調製方法です。官能試験とは、目で色を見て、鼻で香りを感じ、口で味わい、人の感覚を使って評価する試験のことです。
1980年版は何を定めたのか
ISO公式ページの公開要旨によると、ISO 3103:1980は、乾燥した茶葉を磁器または陶器のポットに入れ、新鮮な沸騰水で抽出します。その浸出液を白い磁器または陶器のボウルへ注ぎ、抽出された茶葉と液体の性質を観察します。ミルクを加えた状態、または加えない状態も対象に含まれます。
ここで、白い器というところが面白い。
器の色が派手だと、液色の見え方が変わります。厚い色付きのカップでは、紅茶の明るさや濃さを比べにくい。だから、評価の場では見た目の条件をそろえる必要がある。紅茶のための規格なのに、茶葉だけでなく、器の色まで関係してくるのです。
とはいえ、ISO公式ページで一般に確認できるのは規格の目的と概要です。細かな重量や時間まで、公開要旨だけを見て断定することはできません。この記事では、確認できた範囲を超えて数字を作らないことにします。
これは「おいしい紅茶の作り方」ではない
ISOという言葉を見ると、つい「正しい方法」と考えてしまいます。
しかし、ISO 3103の目的は、家庭で飲む一杯を一つの型に押し込めることではありません。違う茶葉を、できるだけ同じ条件で比較することです。
| ISO 3103が役立つこと | ISO 3103が決めないこと |
|---|---|
| 茶葉を比較するための条件をそろえる | あなたが毎日飲む紅茶の唯一の正解 |
| 色、香り、味、抽出された茶葉を観察する | ミルク・砂糖・レモンを禁止すること |
| 評価する人の条件を近づける | どの産地の紅茶が一番おいしいかを決めること |
| 茶葉の違いを見つけやすくする | 家庭のポットやカップを否定すること |
規格は、暮らしを窮屈にするためだけにあるのではありません。比較したいときに、余計な条件をいったん横に置くためにも使われます。
1980年版は、もう現行規格ではない
ここも大切です。
ISO公式ページでは、ISO 3103:1980は「Withdrawn」、つまり撤回済みと表示されています。1980年版の初版は1980年4月に発行され、その後、2019年版へ改訂されました。
現在の現行版はISO 3103:2019です。ISO公式ページによれば、2019年12月に発行され、2025年に確認されて現行版として残っています。
ですから、1980年版を紹介するときは、「いまも有効な最新規格」と書いてはいけません。
正確には、1980年にこのような規格が登場し、現在は2019年版へ引き継がれている。この記事で取り上げたいのは、規格番号の暗記ではなく、紅茶を比較するために国際的な共通手順まで考えられてきたという事実です。
紅茶の評価は、舌だけで決まらない
紅茶を飲むとき、私たちはつい「おいしい」「渋い」「香りがいい」と一言で済ませます。
専門的な評価では、そこを分けて見ます。乾いた茶葉はどう見えるか。抽出後の茶葉はどう変わったか。液体の色は明るいか、深いか。香りはどこから立つか。口に入れた瞬間、舌の中央、飲み込んだ後に何が残るか。
ISO 3103は、こうした感覚を一つの人間だけの印象で終わらせず、比較できる形に近づけるための考え方です。
だから「官能試験」という言葉は、難しそうに見えて、実はかなり人間的です。最後に頼るのは、機械の数字だけではなく、見る、嗅ぐ、味わうという人の感覚だからです。
ASHBYSを飲み比べるなら、規格を家庭用に翻訳する
家庭でISO 3103をそのまま再現する必要はありません。規格の全文を購入して、試験室のような設備をそろえる必要もありません。
でも、考え方は借りられます。
たとえば、ASHBYSのアッサム、ダージリン、セイロン、イングリッシュブレックファスト、アールグレーを飲み比べるとき、同じポット、同じ水、同じ茶葉量、同じ抽出時間にそろえてみる。最初の一口はストレートで味わう。次に、必要ならミルクや砂糖を加える。
この順番にすると、何が茶葉の個性で、何が飲み方による変化なのかを考えやすくなります。
もちろん、家庭の紅茶は自由です。ミルクを先に入れてもいい。レモンを加えてもいい。砂糖を入れて、自分が一番落ち着く味にしてもいい。
ISO 3103は、その自由を奪うものではありません。むしろ、一度条件をそろえて茶葉を見ておくと、その後の自由なアレンジがもっと面白くなります。
紅茶にも、比較するための国際規格がある。
ASHBYSの紅茶を選ぶときは、商品名だけで決めず、茶葉の種類、飲み方、ミルクやレモンとの相性を少しずつ試してみてください。内容量、価格、在庫、販売条件は、オンラインショップの商品ページでご確認いただけます。
規格を知ると、紅茶は少し自由になる
ISO 3103:1980は、紅茶の正解ではありません。
1980年に発行され、現在は撤回され、2019年版へ引き継がれた。内容は、茶葉を同じ条件で抽出し、色や香りや味を比べるための方法です。
それだけ、と言えばそれだけです。
けれど、紅茶を「好き嫌い」だけで終わらせず、どこが違うのかを言葉にしたい人にとって、これは面白い入口になります。いつものカップを少し横に置き、白い器に紅茶を注いで、茶葉を見て、香りを嗅いで、一口ずつ比べてみる。
そのあとで、ミルクを入れる。砂糖を入れる。レモンを落とす。
比較のための規格を知ったからこそ、最後は自分の好きな一杯へ戻っていける。紅茶の面白さは、正解を守ることではなく、違いを知ったうえで選べることにあります。
参考資料
ISO 3103:1980 Tea — Preparation of liquor for use in sensory tests
ISO 3103:2019 Tea — Preparation of liquor for use in sensory tests

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