紅茶のデカフェ製法

紅茶をデカフェ化(脱カフェイン化)するには、以下のような3つの主な製法があります。それぞれメリット・デメリットがあり、日本への輸入や国内製造では制約も関わってきます。


目次

1. 超臨界二酸化炭素抽出法(Supercritical CO₂ method)

【概要】

  • 高温高圧で液化させたCO₂(二酸化炭素)を使い、カフェインだけを溶かし出す
  • 風味や香りの損失が少ない

【メリット】

  • 天然で安全性が高く、化学溶剤不使用
  • 茶葉本来の味が比較的保たれる

【デメリット】

  • 設備コストが非常に高い
  • 日本でこの技術を持っているメーカーは限られており、製造コストも高騰

2. 水抽出法(Swiss Water Process など)

【概要】

  • 水を使ってカフェインを抽出
  • その後、フィルターなどを用いてカフェインだけを除去し、茶葉に再吸着させる

【メリット】

  • 化学溶剤不使用でナチュラル志向に強い
  • コーヒーのデカフェによく使われる

【デメリット】

  • 風味がやや抜けやすい
  • 紅茶にはあまり使われない(加工が難しいため)

3. 有機溶媒抽出法(エチルアセテート法など)

【概要】

  • エチルアセテート(酢酸エチル)などの溶剤を用いてカフェインを溶かし出す方法

【メリット】

  • 製造コストが比較的低い
  • 大量生産に向いている

【デメリット】

  • 風味や香りに影響が出る
  • 「溶剤使用」による安全性懸念があり、日本の食品衛生法では輸入規制が厳しい

【日本での現実的対応】

  • 日本国内で製造する場合、CO₂抽出法か水抽出法を使う必要がありますが、どちらも設備・原価が高くなるため、一般販売には不向きな価格帯になることが多いです。
  • 海外でデカフェ加工された紅茶を輸入するには、製法の詳細・安全証明書・残留物検査結果などを厚労省に提出し、食品輸入の許可を得る必要があります。

【代替戦略】

前のメッセージでも触れた通り:

  • 「低カフェイン」「おだやか紅茶」などの表現で訴求
  • ルイボスティー・ハーブとブレンドした“紅茶風味”商品
  • グミ・キャンディ・スイーツに展開して“紅茶体験”を味覚からアプローチ

などが、より実用的で収益につながりやすい方法です。


エチルアセテート(酢酸エチル)を使ってデカフェ加工された紅茶は、日本への輸入が非常に難しいか、基本的に“不可”とされています。


エチルアセテート製法の紅茶が輸入できない?

【理由】なぜエチルアセテート製法はNGなのか?

  1. 食品衛生法上の「既存添加物」としての扱い
    • エチルアセテート自体は、果物にも自然に含まれる成分であり、日本でも香料などに使われています。
    • しかし「抽出溶媒として使用したもの」には、残留量の基準が非常に厳しく設定されており、それを満たす証明が困難です。
  2. 「溶剤抽出食品」に該当するため、厚生労働省の個別審査が必要
    • 該当商品は事前に成分分析・製法情報・残留溶媒量の検査結果などを提出しなければならず、ほとんどの中小輸入業者ではそのコストと手続きが見合いません。
  3. 検疫・食品監視で止められるリスクが高い
    • 製品がエチルアセテート法でデカフェ処理されたことがラベルやMSDSに記載されていた場合、輸入通関時に検査対象となり、高確率でNGになります。

【結果として】

  • 海外で一般的な「エチルアセテート法のデカフェ紅茶」は、日本に輸入できないか、輸入できても商業的に難しい
  • そのため、日本で流通しているデカフェ紅茶は、主に以下の2つだけ:
    • 超臨界CO₂法
    • 水抽出法(稀)

日本で販売されているエチルアセテート製法の紅茶はなんであるの?

✅【1】“すり抜けた”のではなく「製法が明記されていない」

多くのデカフェ商品はパッケージや書類上で 製法をあえて明記していません
→ 書類上「ただの紅茶」「ただのデカフェティー」として扱われていることがあります。

たとえば、

  • 原料名:紅茶(カフェインレス)
  • 成分表示:エチルアセテート未記載
  • 製法の問い合わせにも「非公開」や「ナチュラル製法です」と曖昧な回答

この場合、通関時の検査対象になりづらく、輸入できてしまうことがあります。


✅【2】エチルアセテートの「天然由来」であることを主張している

EUなどではエチルアセテートが**「果実由来の天然成分」として認可**されているため、それを理由に「ナチュラル製法です」と主張し、輸入申請時に記載しない、または検査を回避するケースも存在します。

ただし日本の基準はもっと厳格で、

「溶媒抽出として使用した場合」は、残留物の有無に関わらず厚労省の審査対象

になるため、本来は製法が明記されていなくても、書類や検査でバレた場合はNGです。


✅【3】個人輸入/特定用途輸入として入っているケース

  • 個人輸入(ネット通販、海外EC経由)
  • 試験用、展示用、数量限定販売(小規模カフェなど)

このようなルートでは商業流通とは別枠扱いされており、チェックが甘くなっている場合があります。


❗【結論】

「すり抜けている」のではなく、
製法を曖昧にしたり、検査のグレーゾーンを通って入っているケースが多いです。

つまり、本来なら製法の証明が必要なものでも、

  • 書類が省略されていたり
  • 税関でチェックが入らなかったり
  • 成分検査の頻度が少ない

といった理由で流通してしまっている可能性が高いです。

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この記事を書いた人

KANAMARUのアバター KANAMARU 紅茶マイスター

紅茶に携わって30年以上です。喫茶店経営やパン屋、スペイン料理レストラン、病院厨房などに携わってきました。30年もの間、スリランカやインド、台湾、中国、インドネシア、ブラジル、ヨーロッパなどを駆け巡り紅茶だけでなくコーヒーを見て回りました。また、陶磁器も好きなのでノリタケ、ナルミだけでなく瀬戸や有田などにも足を運んでいます。

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